田中宏幸

ここ数年、「自己責任」という言葉がよく使われるようになっています。誰かが、困難に直面していても、それはすべてその人のせい。こうした認識のもと、「だから、困っている人を助ける必要はない」という「強者の論理」が導かれることとなります。こうした考えは、現代社会の動きを象徴しているのでしょう。現実に目を向ければ、福祉は次々と削られ、不安定雇用の増大によって、働いてもまともに生活できない人も目だってきています。そして、弱い立場の人間が、政府など権力者に楯突くと、中傷や個人攻撃などバッシングの嵐……。 そうした「自己責任」の考えが広がる中で、ストレスや息苦しさ、精神的な苦痛を抱えている人も少なくありません。しかし、その辛さは、本当に自分自身のせいなのでしょうか、と香山さんは問いかけます。すなわち、その「悩み」は本当に自己責任なのか、と。自分自身が変われば、その「悩み」は解消されるのか、と。